・小円筋について解剖学の教科書より臨床的に深掘りする
・ローテータカフの働きを知る
・解剖学を臨床につなげる
について書いていきます。
実際、小円筋をはじめとする棘上筋、棘下筋、肩甲課金の回旋筋腱板(ローテーターカフ)は肩の安定性に関わるといわれますが、小円筋の作用は教科書的に外旋ですよね?
なんで安定性に関わるのかなど、鍼灸分野の教科書ではあまり触れられないですよね!?
なのに臨床にでたら
「肩の臨床にはインナーマッスル(最近はこれも言わなくなってスタビリティーマッスルが多くなっている!?)が重要だ!!」
とか
「肩に不安定性がでているのはローテータカフの問題だ!」
とか
いきなり言われますよね?
ここの部分から説明していきたいと思いますので、是非ご覧になってください。
記事を読み終わったら、小円筋について臨床上の大事さ、鍼でのアプローチについて自信がつくと思います。
それでは学習していきましょう!
小円筋の解剖学
まず何を知るにしても基本がとても大事です。
基礎の解剖学からおさらいしていきましょう。
起始 | 肩甲骨の外側縁近位2/3 |
停止 | 上腕骨の大結節、関節包の後下方 |
神経支配 | 腋窩神経(C5・C6) |
作用 | 肩関節の外旋、水平内転 |
栄養血管 | 後上腕回旋動脈、肩甲回旋動脈 |
おおよそこのような情報が書いていると思います。
上でもご紹介したのですが、この情報だけではなかなか臨床に結び付けることができません。
(しかし、基本の情報を知ることは触診や他の情報を入れる時に重要になりますので大事にしてください)
これらの情報のほかに臨床上の大事な点をあげていきます。
上腕骨の骨頭を肩甲骨の関節窩に押し当て安定性を保持する
はいまずこれですねw
上述した『インナーマッスルは肩の安定性に関係する』というやつです。
肩関節は肩甲骨の関節窩に対して上腕骨の骨頭が大きく不安定な形になっているのは皆さんご存知だと思います。
関節唇が補強をしていたり、関節空内が陰圧に保たれているとしても肩関節は非常にその自由度のため不安定だといえます。
そこで活躍するのがローテータカフの筋肉です。
ローテーターカフの筋肉は停止部が大結節や小結節につきます。
これは肩甲上腕関節の運動軸に近い為、運動という点に関していうと非常に働きにくい形になっています。
これはなぜかというと屈曲や外転運動をすることにより、関節軸に対して遠位にあった停止部が関節軸を越えて近位に来てしまいます。(全部ではないです)
このような位置関係になると、関節運動に貢献することは難しくなります。
では、これを少しわかりやすく解説していきます。
次の写真をみてください。
私の手が肩のローテータカフとして、ストレッチポールが上腕骨と仮定してください。
ローテーターカフは先ほどご紹介したように、上腕骨の近位に近い所に停止します。
ストレッチポールがずれないように力を入れると、遠位側に外力が加わってもなかなかずれることはないと思います。
逆にストレッチポールを持ち上げようとすると非常に力が必要で不効率な持ち上げ方になると思います。
このようにローテーターカフの筋肉はスタビリティー(=安定性)に適した筋肉で、モビリティー(=運動)には適していません。
逆に三角筋などのモビリティーがメインの筋肉の場合です。
モビリティーマッスルの場合肩関節をまたいである程度行ったところで付着するケースが多いですよね!?
この場合、上腕骨を持ち上げるのには適した形になっています。
その代わり運動を行いながら、関節窩に安定させるのは苦手になります。
ですのでベストな形としては、肩関節運動時にはスタビリティマッスルが関節窩に上腕骨骨頭を求心位に安定させて、支持起点をつくりモビリティマッスルが運動を行うことが重要になります。
この相互作用をフォースカップルとも呼びます。この働きが破綻することで肩関節障害を引き起こすことがあります。
90°屈曲位での外旋力
小円筋は棘下筋(一部では棘上筋)と協力し合いながら外旋を行っています。
しかし、棘下筋は屈曲位では外旋の運動は少なくなります。これは筋の位置関係をイメージしてもらうとわかるのですが、屈曲位では水平伸展の作用がメインになるためです。
このため、屈曲位での外旋運動は小円筋がメインになります。
この動きは日常で当てはめると、洗顔や飲食の時に顔に手を近づける動作などで、小円筋に問題があるときは代償運動として肩関節が外転をして外旋運動しているケースがあります。
ですので小円筋のテスト法はホーンブロワーテストといったテスト法になります。
①患側の肩関節を肩甲骨面上(軽度水平屈曲位)で90°外転させます。
②肘を90°屈曲させます。
③セラピストは肩を内旋方向に力を加えます。
④被験者は外旋方向に力を入れ抵抗します。
痛みが出たり、力が入らなければ陽性所見となります。
QLS(Quadri lateral space=四辺形間隙)を構成する
肩関節障害の後方の問題になりやすいものの一つとしてQLSがあります。
QLSは上腕骨外科頚、上腕三頭筋長頭、大円筋、小円筋で囲まれた空間で腋窩神経と後上腕回旋動静脈が通過します。
腋窩神経の走行は次の通りです。
腋窩神経は腕神経叢の後神経束から出て、後上腕回旋動脈とともに大円筋と小円筋の間(外側腋窩裂)を通って上腕骨後方に至り前技と後技に分かれ、三角筋内側を前技は三角筋に技を出しながら前方に至り後技は小円筋に筋枝を出した後、上外側上腕皮神経となり三角筋後縁を回って皮下に出て、上腕外側の皮膚に分布する。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/katakansetsu1977/20/1/20_27/_pdf
肩関節の側面から前方近くまで出ているので肩関節全体の痛みにもつながります。
この部分で絞扼が起こると三角筋部の知覚麻痺や疼痛や夜間痛などの原因になります。
また、QLSは肩関節下垂位では空間が広く、挙上時には空間が狭くなります。
もともとアスリートなどでは筋肥大がおきていることも多いので、空間は狭くなりやすいのでオーバーヘッドスローイング動作では絞扼が起きやすいと考えられます。
ですので、小円筋を含めたアプローチは非常に重要と考えられます。
深層線維が関節包に付き、インピンジメントを防止する
肩関節の安定のところでも触れましたが、肩関節腔内は陰圧に保たれています。
このため、関節運動に伴って関節包は関節面に引き込まれる力が作用します。このまま関節内に引き込まれると関節内で挟み込み(インピンジメント)が起こってしまいます。
これを防いでいるのが関節筋(関節包筋)といわれるものです。
肩関節後方関節包に関していえば小円筋がこの働きをしています。
次の図をみてください。
✓90°屈曲位での外旋
✓QLS(Quadri lateral space=四辺形間隙)を構成する
✓深層線維が関節包に付き、インピンジメントを防止する
まとめ
今回は『小円筋の基礎』についてまとめていきました。
教科書などの解剖基礎ではなかなか臨床に結び付かない所もあると思います。
考え方として今回の記事も普段の臨床にお役立てください。
最後までご覧くださりありがとうございました。
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