肩関節障害などの電気鍼(ピコリナ)治療|超音波、手技療法のやり方

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こんにちは!鍼灸スキルアップ塾の陣内です。

今回は『肩関節障害の電気鍼』についてまとめていきたいと思います。

今回の肩関節障害は野球、ハンドボール、やり投げなど物を投げるスポーツやテニスやバドミントンなどのラケットスポーツなどに多く起こる肩関節の痛みにフォーカスを当てて書いていきたいと思います。

特にオーバーヘッドスローイング動作などで痛みが出やすく、アスリートをよくみられている鍼灸師の先生なら臨床上よくみるものだと思います。

肩関節障害を書いていくととても一回の記事だけではまとめられないような膨大な量になってしまいますので今回はスローイングのフォロースルーなどで痛みが出る内旋障害について書いていきたいと思います。

臨床に落とし込めるようにしていきましょう。

目次

肩関節の内旋障害

投球肩などの肩関節障害の内旋障害をみるときにさまざまなスペシャルテストがあると思います。

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それらのスペシャルテストともに大事な評価基準とともに重要なもののとして1st、2nd、3rd肢位での評価があります。

それらの肢位ごとに有害因子を把握していることは肩関節の臨床上とても大事なことだといえます。

是非覚えていきましょう。

肩関節1st内旋の障害因子

1st肢位は肩関節下垂位で肘関節90°での内旋になります。障害因子は

僧帽筋・菱形筋
棘下筋横走線維
三角筋後部線維
棘下筋下脂肪体
後方関節包

などになります。これらの動きをみていくのが重要になります。

肩関節2nd内旋の障害因子

2nd肢位は肩関節外転90°位で肘関節90°での内旋になります。障害因子は

小円筋
棘下筋斜走線維
三角筋後部線維
棘下筋下脂肪体
下後方関節包

などになります。1stでの障害因子と総合してこれらの動きをみていくのが重要になります。

肩関節3rd内旋の障害因子

3rd肢位は肩関節屈曲90°位で肘関節90°での内旋になります。障害因子は

小円筋
棘下筋斜走線維
三角筋後部線維
僧帽筋・菱形筋
棘下筋下脂肪体
下後方関節包

などになります。1st、2ndでの障害因子と総合してこれらの動きをみていくのが重要になります。

これらを総合的に診ると制限因子のほとんどが肩関節の後下方の組織なのがわかると思います。

これらの間から腋窩神経が出てくるため、肩関節の前方に痛みがあっても後方が原因の可能性もあります。

また小円筋の停止部は大結節ですが、一部は後下方の関節包につき肩関節の関節包のインピンジメントを防ぐ、関節(包)筋の役割もしています。

関節筋とは関節包に付着し、関節包の挟み込みを防ぐ作用をします。関節包内は陰圧で保たれているため関節運動によって関節包が引き込まれようとします。それを適度な緊張を保つことにより引き込まれることを防止しています。

これらの後下方の組織に制限がるかを1st、2nd、3rd肢位で確認してstiffnessがどのあたりにあるかと評価をした後に行ってほしいのがHFT (Horizontal flexion test)です。

やり方

①被験者を仰向けに寝てもらいます。

②セラピストは検査する肩の方に立ちます。

③片方の手で肩関節を90°屈曲位にします。

④もう片方の手でしっかり肩甲骨を固定します。

肩甲骨をしっかり固定するのがポイントです。肩甲上腕関節のみ動かすイメージです

⑤肩甲骨を固定したまま肩関節を水平内転させます。

肩関節のスペシャルテストで多いのが肩甲骨の固定です。肩甲骨の固定を行うテストの目的が肩甲上腕関節(GHJ)の動きを診る事が多いです。その為肩甲骨の固定が甘くなるとテストの目的が果たせなくなることが多いのでしっかり固定をすることに留意しましょう。
これらの評価を行うことで肩関節の後方組織の問題を確認しましょう。
また施術後これらの評価項目を確認することによって施術の効果の確認もできます。

なんとなく評価をしてなんとなく施術してよくわからないけど効果が出てしまうと再現性や技術の向上が望めない事はもちろんですが、患者さんにも不利益になりますのでしっかり評価を行いましょう。

肩関節の施術

私が施術を行うときに意識することは

浅層→→→→→→深層

の順にアプローチをしていく事です。

まず実際の動画をご紹介していきます。

先に流れを観ていただいてもいいですし、静止画での解説をみて動画を観ていただいても結構です。

浅層から筋肉

動画では筋肉からアプローチをしていっているのですが、筋緊張が強かったり皮膚運動があまりないようであれば浅層のアプローチから行っていきます。

表層の皮膚をつまむように(つねるのではなく優しく持ち上げるようなイメージで)持ち上げていきます。

痛みがある場合は無理をしない様にしてください。

小円筋、棘下筋斜走線維の滑走不全のリリース

表層の動きの改善がみらえたり問題がなければ次に筋肉にアプローチをしていきます。

2nd、3rd肢位での障害因子の中の筋肉は小円筋と棘下筋斜走線維が多くの問題になります。屈曲、外転肢位では肩関節の後下方の筋肉たちが優位に動きます。

これらは筋の起始部と停止部の位置関係を考えると簡単に推測できると思います。

肩関節の水平位では肩上部の筋肉は内旋運動には向いていません。

ですので、オーバーヘッドスローイング動作の時などは小円筋と棘下筋斜走線維が多くの問題になると考えられます。

それではアプローチをご紹介していきます。

アプローチの前に小円筋と棘下筋の基礎解剖をおさらいしましょう。

小円筋の起始停止

起始
肩甲骨外側縁近位2/3
停止 上腕骨大結節、後下方の関節包
神経支配  ‎腋窩神経(C5・C6)
作用 肩関節の外旋、内転
栄養血管 後上腕回旋動脈、肩甲回旋動脈

棘下筋の起始停止

起始
肩甲骨の棘下窩・棘下筋膜の内面
停止 上腕骨の大結節上部の後小面
神経支配  ‎肩甲上神経(C5・C6)
作用 肩関節の外旋、内転
栄養血管 肩甲上動脈

になります。解説していきます。

肩甲骨の外側縁の近位2/3あたりに指をあてます。

肩関節屈曲90°で肩関節の内外旋をおこないます。この時指で筋収縮を感じましょう。

棘下筋は屈曲90°ではほとんど収縮しなくなります。屈曲位で収縮するのは小円筋なので小円筋の位置を確認します。

この時小円筋の内側縁、棘下筋斜走線維の外側縁でつくる筋間を確認しましょう。

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小円筋の内側縁、棘下筋斜走線維の外側縁でつくる筋間に親指を滑り込ませるようにいれます。

この時、滑走不全がありそうなときは筋間が不明瞭だったり、指が入りにくいケースがあります。

指を入れた状態で内外旋を繰り返しましょう。何度か繰り返し動きがよくなったら、肩甲上腕関節の方に向かって少しづつ指をスライドをしながら同じように押圧、内外旋を繰り返しましょう。

小円筋、棘下筋斜走線維、後下方関節包のアプローチ

筋間のアプローチを終えたら、筋肉のstiffnessと関節包へのアプローチをご紹介していきます。

私の場合、鍼灸師の免許持ちなので鍼を刺していきますが柔整の先生やPTの先生などはコンビネーション刺激装置があればハイボルトと超音波のコンビネーションでも大丈夫だと思います。

この場合先ほど確認した小円筋と棘下筋に向かって鍼を刺します。

この時小円筋と棘下筋は横走線維、斜走線維に鍼を刺しています。これらを筋パルスで筋収縮を起こしていきます。

投球肩の場合、小円筋の攣縮などが非常に多い為筋収縮を誘発し筋の緊張を緩めていきます。

ですので私は上の写真のような設定でします。

他の記事でもご紹介しているのですが低周波領域の鍼通電を行う場合の基本設定は次のようになります。

一次痛 二次痛
神経 Aδ線維 C線維
周波数 高頻度

100Hz以上

低頻度

1~30Hz程度

パルス幅 100μsec以下 100μsec以上
出力 我慢ができるくらい 筋収縮が起こるぐらい

基本このように行っていきます。

これに私は超音波を照射していきます。

狙うところは筋パルスを行っている小円筋の収縮をたどって肩甲骨の関節窩の下方を狙っていきます。

そこを目安に超音波を照射することにより肩関節の後下方を狙うことができます。

小円筋の一部は関節包に付くとご紹介しましたが、小円筋の収縮を伴いながら超音波を当てる事により関節包に伸張刺激を加えながら加温をすることができます。

超音波の加温の効果

組織(Fascia)やECM(細胞外マトリックス:ECM中の主な繊維状タンパク質は、コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、ラミニン)に対しての加温はコラーゲン繊維を変成させ、不足している水分(ヒアルロン酸等)を取り込みやすくすることで、滑走性を上げることにつながります。

これにより、各組織の癒着・瘢痕・拘縮へのアプローチ(リリース)を容易にし、今まで難しかった部分での効果が期待されるといわれています。

その他の超音波の作用を表にまとめます。

温度 生理的変化 臨床的意義
3~4℃ 腱、関節包、および瘢痕組織の膠原繊維(コラーゲン)の伸張性を増す。 伸張性を促進し腱、関節包および拘縮組織のROMを増す
2℃ 運動および知覚神経の伝達速度を増し、疼痛閾値を高める

骨格筋の収縮緊張を和らげる

筋紡錘の緊張を和らげる

痛み治療による筋スパズムの減少

疼痛の軽減

筋肉のスパズムを和らげる

1℃ 血流の促進

代謝の促進

慢性の炎症を軽快させ、筋のスパズムを減少させる

この他、受容器の事などを考慮しながら超音波を当てていけばいいと思います。

この場合、肩関節の関節包や肩の構造を考え1MHzで行っていっていいと思います。

出力やduty比などは上記の設定どおりで行っています。

超音波による立体的な加温は筋肉だけではなく、関節周囲の軟部組織のアプローチには非常に有効です。

その為、結果を出すためには解剖学的なイメージをしっかり持っていた方が効果は出しやすいです。

超音波はプローブから直線的にしか出ないので大事なのはどの組織に当てたいのかという明確な意識と解剖学的なイメージです。

それがあるかどうかで施術の結果は多く変わります。

関節包のストレッチ

表面上からアプローチをして筋同士の滑走→筋肉の筋緊張の改善→関節包に加温でかなり効果はあると思うのですが、あとここで追加してほしいのがストレッチです。

これは超音波の票でもご紹介しているのですが、

腱、関節包、および瘢痕組織の膠原繊維(コラーゲン)の伸張性を増す

という効果です。

つまり、超音波により加温を加えることによって関節包のコラーゲンの伸張性が増します。この状態で関節包に向かってストレッチをすることにより単独でストレッチをするより非常に効果的になります。

だから私は超音波などで加温した状態でストレッチなどを加えることが多いです。

肩関節後方の組織のストレッチのやり方

①肩関節を軽度屈曲、外転します。

②この位置から内旋させ、上腕骨頭を逆の手で把握し肩関節の前方から押さえていきます。

③この事により肩関節の後方組織が伸びる感じを保持し30秒ほど伸ばします。

これらの施術を終えた後でもう一度HFTを行うと関節可動域が広がっているのがわかると思います。

評価により肩関節の後下方組織に問題があると確認ができた場合、かなり効果が実感できると思います。

まとめ

今回は『肩関節障害の電気鍼』についてまとめてみました。鍼灸と物療を組み合わせることにより非常に効果が高くなると私は思っております。

今回のやり方は一つの施術の提案になっています。是非参考にしてみてください。

最後までご覧くださりありがとうございました。

ブログの更新よりyoutubeの更新の方が早いので良ければyoutubeチャンネルのチャンネル登録もよろしくお願いします。

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