今回の記事は『前鋸筋のトリガーポイント鍼治療』についてまとめていきたいと思います。
前鋸筋は肋骨に付く筋肉で呼吸や姿勢に関係する筋肉です。猫背やいわゆる巻き肩といわれるような姿勢の原因の一つに肩甲骨の後傾というものがあります。
肩甲骨の後傾を治すためには前鋸筋は重要な筋肉です。
前鋸筋は肋骨に張り付いている様な筋肉なので鍼灸師の先生方は気胸のリスクから苦手意識がある方もおられるかもしれません。
しかし、前鋸筋にアプローチはとても大事ですよ。
今回の内容は
- 前鋸筋の基礎解剖
- 前鋸筋の関連痛領域
- 前鋸筋のトリガーポイント好発部位
- 前鋸筋のトリガーポイントの触診、刺鍼法
です。
是非最後までご覧になってください。
前鋸筋の起始停止
起始 | 第1~第9肋骨の側面 |
停止 | 肩甲骨の肋骨面内側縁の全長
肩甲骨の上角と下角 |
神経支配 | 長胸神経(C5~C7) |
作用 | 肩甲骨の外転、上方回旋、下方回旋
肩甲骨を固定すると肋骨の挙上 |
栄養血管 | 上部は外側胸動脈、下部は胸背動脈 |
前鋸筋は肩甲骨を外転させる唯一の筋肉です。
猫背の場合、外転、上方回旋、前傾位になっていることが多いです。作用を見てもらってわかると思いますが、前鋸筋の作用とほぼ同じになります。
猫背の場合、前鋸筋などの筋肉が機能不全に陥ってトリガーポイントが形成され症状を呈している受態が非常に多いです。
肋骨にびっしりついてますよね!?これが硬くなると胸郭の動きにも影響しますよ。呼吸が浅い方はこのあたりの筋肉が問題になります。
前鋸筋のトリガーポイントの関連痛領域
前鋸筋の関連痛領域は上部と下部で分かれます。
上部のトリガーポイントは肩凝りなどの症状を呈し、下部は側胸部の痛み、背中のコリ感の原因にもなります。
分けてみていきましょう。
前鋸筋上部の関連痛領域
前鋸筋上部のトリガーポイントの関連痛領域は僧帽筋の筋の範囲と似ています。
ただ、痛みが起こりやすい所は肩甲骨の上角あたりと背骨に沿って下部胸椎あたりまで広がるように痛みが出ます。
いわゆる肩こりの範囲ですね。
この事からも前鋸筋へのアプローチはとても大切になります。
前鋸筋下部の関連痛領域
下部前鋸筋の関連痛が出やすい範囲はまず側胸部に放射線状に広がる痛みです。
肋間神経痛と間違われる痛みですが、肋間神経痛は神経沿いに痛みが出ることが多く、トリガーポイント由来の痛みは放射線状に広がる痛みです。
それと肩甲骨の下角部に痛みも出やすいです。
肩甲骨の下角部に痛みが出る場合は他のアプローチでなかなか改善しない場合前鋸筋のアプローチで改善することがありますよ。
前鋸筋のトリガーポイントの好発部位
トリガーポイントの好発部位も上部と下部で分けて紹介していきます。
前鋸筋上部のトリガーポイントの好発部位
前鋸筋の上部のトリガーポイントが形成されやすい場所は前鋸筋の一番上部にある部位で上角から始まり第一肋骨に付く前あたりになります。
触診ではわからないので鍼先で認知覚があるかどうかで判断します。
この部位は刺鍼するのにも非常に技術の要するところになります。
前鋸筋下部のトリガーポイントの好発部位
前鋸筋の下部のトリガーポイントが形成されやすい部位は第5~8肋骨あたりの側胸部にできやすいです。
前鋸筋上にある経穴も1つの目安になるかもしれません。
淵腋(えんえき)
側胸部、第4肋間、中腋窩線上
輒筋(ちょうきん)
側胸部、第4肋間、中腋窩線の前方1寸
大包(だいほう)
側臥して肩関節を外転させ、中腋窩線上で第6肋間の高さに取る
前鋸筋のトリガーポイントの刺鍼法
トリガーポイントを触診するにはまず前鋸筋の触診が大事なります。
前鋸筋に限らず、触診は臨床のレベルを上げるために必要です。
前鋸筋の触診法
前鋸筋の上部は触診することが出来ないため、肩甲骨の上角と肋骨の下縁を目印にします。
この結んだ線を頭にいれ前鋸筋の走行をイメージします。
前鋸筋の下部は肋間部を筋の走行を切るように触っていきます。
硬結はかなり小さい為、触診は細かく触ることが重要です。
前鋸筋のトリガーポイントの刺鍼法
実際の流れは動画でも確認されてみてください。
前鋸筋の上部
前鋸筋下部
動画も一緒に見ていただいた方がわかりやすいので是非ご覧になってください!
前鋸筋の上部のトリガーポイントを狙う場合、側臥位で寝てもらい上肢を固定するため枕などを抱いてもらう姿位で鍼を打っていきます。
鍼を刺入するポイントは肩甲骨の上角から鎖骨の下縁方向に鍼を打っていきましょう。下方に打つと気胸を起こす可能性があるので絶対下方に打たないようにしてください!
このような形になります。
使っている鍼は1寸3分の鍼ですが半分ぐらい打ったところでしっかり響きますよ。
前鋸筋の下部のトリガーポイントを狙う場合、斜刺で行っていきます。
前鋸筋は側胸部の一番体表にある筋肉ですので、斜刺でこするように打つことにより上手くトリガーポイントに当たります。
気胸などの恐れもないですよ。
根元付近まで鍼をしても、問題はありません。
咳などをする人に置鍼をするときは気を付けてくださいね!
側胸部に響くと上手くトリガーポイントに当たっていると思います。
まとめ
今回は前鋸筋のトリガーポイントについてまとめました。
前鋸筋は肩甲骨あたりのこる感じなどにはアプローチ必須の筋肉です。
しっかり臨床に落とし込んでくださいね!
最後までご覧になりありがとうございました!