今回の記事は『大内転筋のトリガーポイント鍼治療』についてまとめていきたいと思います。
大内転筋は筋の中に内転筋管(ハンター管)があったり、腱性部と筋性部で分かれてたりと構造が少し複雑です。解剖学的知識をしっかり頭に入れておきましょう。
関連痛領域では股関節痛に関係し、神経走行で考えると膝の痛みに重要です。鍼治療、手技療法でよく使いますよ!
今回の内容は
- 大内転筋の基礎解剖
- 大内転筋の関連痛領域
- 大内転筋のトリガーポイント好発部位
- 大内転筋のトリガーポイントの触診、刺鍼法
です。
是非最後までご覧になってください。
大内転筋の起始停止
大内転筋は筋性部と腱性部に分けられます。まずは見ていきましょう。
大内転筋の筋性部(内転筋部)
起始 | 恥骨の下枝 |
停止 | 大腿骨の粗線内側唇 |
神経支配 | 閉鎖神経(L2~L4)
坐骨神経(L4、L5) |
作用 | 股関節の内転、屈曲、内旋 |
栄養血管 | 閉鎖動脈 |
大内転筋の腱性部(ハムストリング部)
起始 | 坐骨枝、坐骨結節 |
停止 | 大腿骨内側上顆の上方の内転筋結節部 |
神経支配 | 閉鎖神経(L2~L4)
坐骨神経(L4、L5) |
作用 | 股関節の内転、伸展、内旋 |
栄養血管 | 閉鎖動脈 |
に分かれています。
大内転筋は伸展と屈曲の背反する作用を持っています。
また腱性部は広筋内転腱板を介し内側広筋と繋がります。
大内転筋の筋性部と腱性部のの停止する間に大きな穴がありますが内転筋腱裂孔と呼びます。
広筋内転筋腱板と内転筋腱裂孔によりつくられる管はハンター管(内転筋管)と呼ばれます。ハンター管の中に大腿動脈、大腿静脈、伏在神経が通ります。
この部位で絞扼することを『ハンター管症候群』と言います。
ハンター管症候群
ハンター管症候群とは聞いたことがありますか!?
ハンター管とは先ほども書きましたが広筋内転筋腱板と内転筋腱裂孔によってつくられます。その間を伏在神経が通ります。
ここで神経の圧迫があると膝の内側にかけて痛みが生じます。
上の図は左側の青丸のところを拡大したのが右側です。緑っぽくなっているのが伏在神経です。(赤の矢印で指している神経です)
また黄色いあたりにハンター管があります。
神経に対し前方にある筋肉が内側広筋で後方が大内転筋です。この間にハンター管があります。
ハンター管症候群の場合チネル徴候が診られます。
私の経験上、チネル徴候が診られるのは少なく感じます。
TKA(人工膝関節置換術)後、膝関節の内側の痛みがあって来院される方などこの部分での問題があることが多いような気がします。
大内転筋のトリガーポイントの関連痛領域
大内転筋の関連痛領域をご紹介します。
大内転筋の関連痛領域は
- 膝関節前面内側よりやや上部のあたりに広がる痛み
- 大内転筋の走行に広がる痛み
- 鼠径部付近に広がる放射線状の痛み
になります。
関連痛領域の痛みの多くは股関節周りの痛みになります。
大内転筋のトリガーポイントの好発部位
大内転筋の好発部位は膝関節より上部の7~10センチほど上と停止部に近い部分にできやすいです。
大内転筋にある経穴は陰包がありますのでそのあたりを狙うのもいいと思います。
陰包(いんぽう)
曲泉の上方、膝蓋骨底上方4寸の高さにある。おおよそハンター管の位置にあります。
大内転筋のトリガーポイントの刺鍼法
トリガーポイントを触診するにはまず大内転筋の触診が大事なります。
大内転筋の触診
トリガーポイントが形成されやすいのは腱性部が多いので腱性部を触っていきます。
まず触るランドマークは大腿骨内側上顆の上方の内転筋結節部を触るところから始めましょう。
大腿骨内側上顆の上方の内転筋結節部を確認したら股関節を内転方向に力を入れてもらい収縮を確認しましょう。
内転筋結節部につく筋肉は大内転筋の腱性部だけですのでしっかり触診をしていきましょう。
途中から坐骨結節に向かう線維が確認できると思います。
大内転筋のトリガーポイントの刺鍼法
実際の流れは動画でも確認されてみてください。
よかったら動画も見てくださいね!
停止部に向けて鍼を打つのがポイントです。
大内転筋のトリガーポイントはなかなか当たって関連痛を出すのが難しいです。
その為刺鍼転向法や雀啄などを使ってうまくトリガーポイントに当てる事が大事なります。
股関節に響く感じがあればトリガーポイントに当たったと思います。
まとめ
今回は大内転筋のトリガーポイントについてまとめました。大内転筋は股関節や膝関節の痛みに関係する筋肉です。
簡潔にまとめると
大内転筋はハンター管が通り伏在神経の絞扼部位を作る
関連痛領域は股関節~膝関節にかけての痛み
腱性部の方にトリガーポイントが形成しやすい
トリガーポイントに鍼をあてるのは技術がいる
です。
是非参考にしてみてくださいね!