今回は運動鍼についての第9弾『内側上顆炎(野球肘)の運動鍼』です。
内側上顆炎はオーバーヘッドスローイング動作を行うスポーツではよく起こるスポーツ障害です。
置鍼だけではなかなか効果が出ないときや、特有の動きだけ痛みが残る時には運動鍼はオススメです。
運動鍼はどんな場所でも効果的に使えますよ。
是非臨床に落とし込んでいってください。
内側上顆炎と円回内筋
野球肘をはじめとする内側上顆炎の原因の多くはコッキング期から加速期の時に起こる過度な外反負荷による事が多く、円回内筋はこの外反負荷に対し動的な安定性に関与しています。
その為、内側上顆炎において円回内筋の筋緊張や圧痛が強いことが多いです。
まず円回内筋の基本的な解剖的知識のおさらいです。
起始 | 上腕頭:上腕骨内側上顆. 尺骨頭:尺骨鈎状突起 |
停止 | 橈骨中央外側 |
神経支配 | 正中神経(C6・C7) |
作用 | 肘関節屈曲、前腕の回内 |
栄養血管 | 尺骨動脈、橈骨動脈 |
円回内筋は二頭筋で上腕骨と尺骨から起始します。
内側上顆から始まっている事は覚えていても、尺骨鈎状突起からの起始は忘れがちですよね!?
臨床で困ったときは基礎解剖に立ち戻ることはとても重要なことです。
解剖学的の内側上顆炎と円回内筋の関係性が深いと解ったと思います。
ですので今回ご紹介する運動鍼は円回内筋を狙った運動鍼になります。
内側上顆炎の運動鍼の狙うポイント
鍼を狙うところは二か所になります。
緑の丸で囲んだ起始部のところ。ここは後でご紹介するのですが捻鍼法での刺鍼になります。
黄色の丸を囲んだ筋腹のところ。ここは直刺での刺鍼になります。
内側上顆炎の運動鍼やり方
実際の鍼を打っている動画はこちらになります
実際の動画を見ていただく方が流れもわかると思いますので是非動画のご視聴もよろしくお願いします。
それでは実際の運動鍼を静止画でもご紹介していきます。
まず内側上顆を確認します。内側上顆から円回内筋の筋走行を確認します。
解らないときは肘関節を屈曲、回内をすることで円回内筋の収縮するのがわかると思います。
使っている鍼は1寸の1番鍼を使っています。
上腕骨の内側上顆から斜めに捻鍼で水平刺で刺入していきます。筋まで到達してしまうと痛みが出ますので皮下までに留めるようにしましょう。
筋まで至ってないかは筋運動をすると鍼が動くのですぐにわかると思います。
当ブログでは何度も出ていますが、この図を頭の中にイメージして筋肉までいかないようにしてくださいね。
この部分の鍼は刺した状態にしておきます。
次に円回内筋の筋腹部分の鍼です。
使っている鍼は1寸3分の3番鍼を使っています。
円回内筋は深層にある筋肉ではないので半分ほど刺入し、響きが出るぐらいに雀啄をします。
雀啄をすると正中神経沿いに響きが出る時もありますよ。
円回内筋の下に正中神経が通ります。ピッチングの時に痺れがある時はこの部分に問題がある円回内筋症候群かもしれません。
響きを得る事が出来たら、皮下まで引き抜きます。
皮下まで抜く感覚は練習をしましょう。出来るようになれば刺鍼転向法なども簡単にできるようになりますよ。
皮下まで抜けたら、肘関節を屈曲、回内の抵抗運動を行いましょう。
この時に痛みや力の入り具合を確認しておいきましょう。
痛みが残るようでしたらもう一度鍼を刺入して雀啄して響きを得るぐらいの刺激をしましょう。
その後皮下まで抜き運動をしてもらいます。
痛みがなくなるまで何度か繰り返しましょう。
多くの場合は2~3回で痛みが消失しますよ。
まとめ
円回内筋は肘関節の外反に対するスタビライザーになる筋肉です。そのため負担が多く筋の緊張を起こりやすい筋肉になります。筋緊張が強くなることにより内側上顆に対する牽引ストレスが強くなります。
しっかり狙って施術が出来るようにしましょう。
応用が利くところですので是非臨床に落とし込んでいってください。
過去の運動鍼の記事はこちらになります。
あわせてどうぞ!
第1弾『首の運動鍼』
第2弾『シンスプリントの運動鍼』
第3弾『股関節の運動鍼』
第4弾
『ハムストリングの運動鍼』
第5弾
『膝の痛みの運動鍼』
第6弾
『腰の運動鍼』
第7弾
『手首の運動鍼』
第8弾
『足首の運動鍼』